2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年2月に猛威をふるい、今後も予断を許さない状況です。それに伴い、イベントの中止や外出の自粛の要請が増え、音楽業界においてはコンサートや音楽レッスンのキャンセルが相次いでいます。
Piascore 株式会社としては、インターネットを活用した音楽活動を積極的に推進することで、こうした事態を少しでも打開していきたいと考えています。そこで、以前行っていた「ビデオ通話型のオンライン楽器レッスン事業」での経験をもとに、オンライン楽器レッスンを検討している楽器講師・先生がスムーズに導入できるようにガイドラインを執筆・公開いたしました。
本ガイドラインが、一人でも多くの講師・先生、生徒のためになることを願っています。
はじめに
- 本ガイドラインは、「ビデオ通話型のオンライン楽器レッスン」をスムーズに導入するための指針を述べたものです。
- 本ガイドラインは一般的なことを述べたものであり、レッスンによってはそぐわないこともあります。適宜カスタマイズすることを検討してください。
- 本ガイドラインに起因して生じた損害に関し、Piascore 株式会社ならびに協力者は一切その責を負いません。
本ガイドラインが想定する対象
- 楽器演奏を個人指導する講師・先生
ビデオ通話型のオンライン楽器レッスンとは
- 「ビデオ通話型オンラインレッスン(以降、オンライン楽器レッスン)」とは、Skype や LINEのビデオ通話などの「ビデオ通話サービス」を通じて行う楽器のレッスンのことです。
- ご自宅や音楽スタジオなど、楽器が演奏可能でインターネットが使える場所であれば、どこでもレッスンをすることができます。
- オンライン楽器レッスンを行うあたり、通常のレッスンに必要な楽器や部屋の他に、スマートフォンとインターネット環境が必要です。
オンライン楽器レッスンの特長
時間と場所の融通が利くようになる | 行くまでの時間やお金がかからない(あるいは節約できる)ため、楽器を定期的に習うためのハードルが低くなります。 |
集中力の高いレッスンになる | ビデオ通話で打ち合わせをしたことがある方は分かると思いますが、すぐに本題に入ることができるため、集中力が高いレッスンになります。 |
むやみに緊張しなくて済む | 「リアルな場のレッスンに比べて、先生の”圧”を感じないため、緊張せずに気楽に受けられる」という声があります。 |
2台のピアノを使って効率良く習える | ピアノに限りますが、通常は生徒・先生それぞれにピアノがあるため、2台のピアノを使ったレッスンが可能になります。 |
通常のレッスンとの違い
- 1つのカメラからの映像のため、様々な方向から指や姿勢を見たい場合は、カメラを動かす必要があります。
- マイク、スピーカーを通じて音を聴くため、実際に楽器から発せられた音と比べて、音色や音の広がり、ダイナミックレンジ(大小の差)が異なります。
- ネットワークを通じて映像の送受信を行っているため、0.5〜1秒未満程度の遅延が発生します。この遅延により、ビデオ通話を通じた合奏を行うことはできません。
レッスン代やキャンセルの扱いについて
- レッスン代は、通常のレッスン同等の金額にする場合が多いです(むやみに下げないようにしましょう)。
- レッスン代の受け取り期日についても、通常のレッスンと同じ期日にする場合が多いです(例:前日夜までに入金)。
- 振込は、インターネット送金サービスや銀行振込を用いましょう。
- レッスンを欠席する場合の規約を決めておきましょう(例:「前日の何時までに連絡」「何時以降は受講料の○パーセントのキャンセル料」など)。
準備するもの
オンライン楽器レッスンを行うあたり、通常のレッスンに必要な楽器や部屋の他に、以下の4点が必要です。
- インターネットに接続されたカメラデバイス
- ビデオ通話サービス
- インターネット回線
- レッスン代金の受け取りのための送金サービス
1. インターネットに接続されたカメラデバイス
スマートフォン、iPad などのタブレット
- 普段お使いのスマートフォンであれば、ほぼ問題なくオンライン楽器レッスンを行うことができます。
- 設置場所・方法
- ピアノの場合
- 鍵盤と顔が見えるように、ピアノの横に置いてください。立てにくい場合は、譜面台やスマホスタンドを使うか、ゴムやハンカチを敷くなどして滑らないように固定しましょう。
- ピアノ以外の楽器の場合
- 正面から腰の位置までが見えるように、譜面台や棚などに置きましょう。
- ピアノの場合
パソコンと内蔵・Webカメラの組み合わせ
- スマートフォンがない場合や大きな画面でオンライン楽器レッスンを行いたい場合は、パソコンと内蔵・Webカメラを組み合わせましょう。
2. ビデオ通話サービス
- ほとんどのビデオ通話サービスは、無料で利用することができます。
- Zoom や Whereby のようなURLだけで接続できるビデオ通話サービスであれば、生徒側にアカウント作成が不要です。
サービス | 特長 |
---|---|
Zoom | URLだけで接続できる / 高品質 / 背景を隠すことがきる / 録画ができる |
Whereby | URLだけで接続できる |
LINEのビデオ通話 | LINE にアカウントがあれば、気軽に利用できる |
FaceTime | iPhone / iPad を使っていれば、電話のように気軽に接続できる |
facebook メッセンジャー | facebook にアカウントがあれば、気軽に利用できる |
Skype | ビデオ通話サービスの老舗 |
3. インターネット回線
- できるだけ安定した回線を利用するようにしましょう。
自宅の高速インターネット | 通常、もっとも安定した方法となります。 |
モバイルルーター | 奥まった室内や壁の厚さ、階数によっては、電波が入りにくい場合があります。事前に確認しておきましょう。 |
スマートフォンの回線 | 回線の品質はまあまあ良いのですが、パケット代には注意しましょう(1時間のビデオ通話で0.6GBほどパケットを消費します) |
貸しスタジオなどの無料で使える WiFi(無線LAN) | 回線の品質が良くないことが多いので、モバイルルーターなどのバックアップ回線を用意しておきましょう。 |
4. レッスン代金の受け取りのための送金サービス
- レッスン代の受け渡し方法には、「インターネット送金サービス」「銀行振込」などがあります。
インターネット送金サービス
クレジットカードやプリペイドカードを使ってチャージを行うことで送金できるサービスです。
- 送金手数料は、無料か、利率が非常に低いです。
- 多くの場合、アプリをインストールする必要があります。
サービス | 主なチャージ方法 | 主な出金方法 |
---|---|---|
LINE Pay | 銀行口座、プリペイド、LINE Pay カード | JCB加盟店での決済、銀行振込 |
Kyash | クレジットカード、プリペイド | VISA加盟店のオンラインストア、Suicaへのチャージ |
楽天ペイ | クレジットカード、楽天キャッシュ | 楽天ペイ加盟店での決済 |
PayPay | クレジットカード、銀行口座 | PayPay加盟店での決済 |
※ ご利用の際は、各サービスの規約などをご確認ください
銀行振込
- 簡易な方法ですが、振込手数料がかかります。
- 振込手数料を生徒・講師のどちらが負担するかは、予め決めておきましょう。
オンライン楽器レッスンの進め方
準備
- 予めレッスン開始時間を決めます。
- 利用するビデオ通話サービスにアカウント登録が必要な場合は、早めに登録しておきましょう
- レッスンを行う前に、部屋の状況が原因でインターネット接続できないということがないように、事前に接続テストを行いましょう。
- アカウント名やURLなどの接続先情報は、事前に交換しておきましょう。
- 講師・生徒のどちらからビデオ通話サービスの接続を開始するか、事前に取り決めをしておきましょう。
レッスン前
- 10分前までに、ビデオ通話に使うデバイスの設置を行いましょう。
- スマートフォンの充電が十分できていることを確認しましょう
- ネットワーク接続に問題がないことを確認しましょう。
- マイクやスピーカー、カメラに問題がないことを確認しましょう。
- 開始時間を守るために、レッスン開始2分前には、ビデオ通話の接続を行っておきましょう。
レッスン中
- オンライン楽器レッスンの経験が少ないうちは、通常のレッスン以上に緊張する場合があります。レッスン冒頭で気軽な会話を行うなどして、お互いの緊張をほぐすようにしましょう。
- 音声通話ではなく、ビデオ通話を使用しましょう。顔が見えるかどうかは、コミュニケーションのハードルを大きく変えます。
- 音声だけですと、意図がうまく伝わらなかったり誤解を招く場合があります。話すときは、相手に顔が見えるようにカメラに向かい、手や体を使った表現で伝えることを心がけましょう。
- 早口ですと音声が聞きづらい場合がありますので、ゆっくりしゃべることを意識しましょう。
- 姿勢を見たい場合など、必要に応じてカメラの向きを変えましょう。
- 必要があれば、終了前に次回のレッスンの日時を確認しましょう。
- 楽譜上に小節番号などを予め振るなどして、演奏して欲しい箇所を言葉で指示できるようにしましょう。
レッスン後
- ビデオ通話が切断されていることを必ず確認しましょう。
- しばらくしたら、レッスン代の入金を確認しましょう。
- 振り返りのメッセージを送るなどして、少しでもコミュニケーション不足を解消するようにしましょう。
トラブルがあったとき
- ネットワークのトラブルなどで、開始時間になっても接続できない、あるいは途中で切れてしまった
- 予め、生徒と講師の間で「トラブルがあった場合は、レッスン代は半額にします」など規約を決めておきましょう。
- トラブルがあった際に、他のビデオ通話サービスに切り替えられるよう、2つ以上のビデオ通話を使えるようにしておきましょう(例:Skype と LINEのビデオ通話)。
- レッスン代の振込がなかなか行われない
- 多くのインターネット送金サービスでは、相手に請求を送ることができますので利用しましょう。
バージョン
2020-02-22 | 0.9.0 | 初稿 |
2020-02-23 | 1.0.0 | 一部校訂 |
校訂で協力頂いた方々
- 早川 乃里子
- 金子 良江
- 礒山 久理
- 松橋 朋潤
- 川端 俊司
※ 敬称略
執筆
Piascore 株式会社